慶應義塾大学総合政策学部2006年度（春学期）憲法演習

憲法演習

2006年度春学期慶應義塾大学総合政策学部憲法演習の授業関連情報ウェブページです。
受講者の便宜のため、授業に関するお知らせや使用する教材等を掲載しています。

講義案内

　この演習は、日本国憲法の解釈論を通じて、legal way of thinking（法的なものの考え方）を涵養することを目的とするものである。
　憲法の規定する人権と統治機構の枠組みを理解することは、わが国における公共政策を考えようとする学生にとっては、きわめて有益なことである。この演習では、受講者の綿密な自習と教室での徹底した討議によって、標準的な憲法解釈の基礎知識を習得することを目指す。なお、憲法は、国や地方公共団体の公務員試験の受験科目であるので、公務員を志望する学生は、憲法を学習する際のペースメーカーとしてこの演習を活用することができるであろう。また、将来的に法曹（裁判官、検察官及び弁護士）になりたいと考えている学生にとっても、ソクラテス・メソッドによって憲法解釈の徹底理解を図ることは、法科大学院での専門教育の基礎を固める意義があるだろう。
　受講者には、毎回、いくつかの憲法解釈学上重要な概念の説明をまとめたうえで、討議に参加することが求められる（この演習の進め方の詳細については、シラバスを参照されたい）。したがって、この演習を履修登録する者は、毎回きちんと出席し、課題を提出し、討議に参加しなければならない。頻繁に遅刻・欠席する学生は、そもそも履修登録をしてはならない。注意事項があるので、履修登録しようと考えている者は、必ず第1回の授業に出席されたい。
　春学期は、特に、標準的な憲法解釈の基礎の徹底的な理解を図り、国家公務員や地方公務員などの国家試験の受験希望者の学習に資するような演習を展開したいと考えている。

⇒シラバスは、ここをクリックしてください。

日程

	各回の単元／主な内容／その回で取り扱う判例	準拠教材の該当ページ	課題メモ	判例
1	Introduction	なし
	憲法演習の進め方と憲法の学び方
2	近代立憲主義の基本原理――憲法総論・人権総論（1）	3-17、35-70、73-85	●	●
	憲法の三大原理と補助的原理（権力分立、法の支配、法治主義）、人権の意義・分類
	・砂川事件（最大判昭和34年12月16日刑集13巻13号3225頁）
3	憲法と人権の限界――人権総論（2）	85-113、252‐257	●	●
	人権の限界（公共の福祉）、人権の主体（外国人、法人、一般職公務員、未成年者、在監者）、憲法の私人間適用
	・マクリーン事件（最大判昭和53年10月4日民集32巻7号1223頁）・定住外国人地方参政権事件（最判平成7年2月28日民集49巻2号639頁）・八幡製鉄事件（最大判昭和45年6月24日民集24巻6号625頁）・猿払事件（最大判昭和49年11月6日刑集28巻9号393頁）・全農林警職法事件（最大判昭和48年4月25日刑集27巻4号547頁）・三菱樹脂事件（最大判昭和48年12月12日民集27巻11号1536頁）・日産自動車事件（最判昭和56年3月24日民集35巻2号300頁）
4	幸福と平等の理想と現実――包括的基本権・法の下の平等	114‐138	●	●
	幸福追求権、新しい人権、法の下の平等
	・京都府学連事件（最大判昭和44年12月24日刑集23巻12号1625頁）・前科照会事件（最判昭和56年4月14日民集35巻3号620頁）・「宴のあと」事件（東京地判昭和39年9月28日下民集15巻9号2317頁）・女子再婚禁止期間事件（最判平成7年12月5日判時1563号81頁）・非嫡出子相続分規定事件（最大決平成7年7月5日民集49巻7号1789頁）・尊属殺人事件（最大判昭和48年4月4日刑集27巻3号265頁）・議員定数不均衡違憲訴訟（最大判昭和51年4月14日民集30巻3号223頁）
5	内心の自由――精神的自由権（1）	139-161	●	●
	思想・良心の自由、信教の自由と政教分離原則、学問の自由と大学の自治
	・謝罪広告事件（最大判昭和31年7月4日民集10巻7号785頁）・麹町中学内申書事件（最判昭和63年7月15日判時1287号65頁）・加持祈祷事件（最大判昭和38年5月15日刑集17巻4号302頁）・剣道実技拒否事件（最判平成8年3月8日民集50巻3号469頁）・オウム真理教解散命令事件（最決平成8年1月30日民集50巻1号199頁）・津地鎮祭事件（最大判昭和52年7月13日民集31巻4号533頁）・東大ポポロ事件（最大判昭和38年5月22日刑集17巻4号370頁）
6	表現の自由――精神的自由権（2）	162-203	●	●
	表現の自由、事前抑制の禁止・検閲の禁止、二重の基準論、集会・結社の自由
	・サンケイ新聞事件（最判昭和62年4月24日民集41巻3号490頁）・博多駅テレビフィルム提出命令事件（最大決昭和44年11月26日刑集23巻11号1490頁）・「チャタレイ夫人の恋人」事件（最大判昭和32年3月13頁刑集11巻3号997頁）・夕刊和歌山時事事件（最大判昭和44年6月25日刑集23巻7号975頁）・北方ジャーナル事件（最大判昭和61年6月11日民集40巻4号872頁）・税関検査事件（最大判昭和59年12月12日民集38巻12号1308頁）・第一次家永教科書訴訟（最判平成5年3月16日民集47巻5号3483頁）
7	財産と身体の自由――経済的自由権・身体的自由権	204-233	●	●
	職業選択の自由、居住・移転の自由、財産権の保障、二重の基準論、目的二分論、法定適正手続の保障、憲法上の刑事手続
	・小売市場距離制限事件（最大判昭和47年11月22日刑集26巻9号586頁）・薬局距離制限事件（最大判昭和50年4月30日民集29巻4号572頁）・公衆浴場距離制限事件（最大判昭和30年1月26日刑集9巻1号89頁）・酒類販売免許事件（最判平成4年12月15日民集46巻9号2829頁）・奈良県ため池条例事件（最大判昭和38年6月26日刑集17巻5号521頁）・農地改革事件（最大判昭和28年12月23日民集7巻13号1523頁）
8	Achievement Test　(1)
	第7回までの範囲についての筆記試験と口答試験
9	国家による自由――国務請求権・社会権	234-237、242-257	●	●
	請願権、裁判を受ける権利、国家賠償請求権、刑事補償請求権、生存権、教育を受ける権利と教育権、労働基本権
	・朝日訴訟（最大判昭和42年5月24日民集21巻5号1043頁）・堀木訴訟（最大判昭和57年7月7日民集36巻7号1235頁）・旭川学テ事件（最大判昭和51年5月21日刑集30巻5号615頁）
10	政治部門における権力分立――国会・内閣	237-241、261-306	●	●
	参政権、近代選挙法の原則、国会の地位・組織・権能、議院の権能、選挙制度、衆議院の解散、政党、権力分立、内閣の組織・権能、内閣総理大臣の権能、議院内閣制の本質、独立行政委員会
11	司法権と違憲審査権――裁判所	307-329、347-361	●	●
	司法権の本質、裁判所の組織・権能、司法権の独立、違憲審査権の本質、司法権・違憲審査権の限界、部分社会論
	・板まんだら事件（最判昭和56年4月7日民集35巻3号443頁）・警察法改正無効訴訟（最大判昭和37年3月7日民集16巻3号445頁）・警察予備隊訴訟（最大判昭和27年10月8日民集6巻9号783頁）・苫米地事件（最大判昭和35年6月8日民集14巻7号1206頁）・富山大学事件（最判昭和52年3月15日民集31巻2号234頁）
12	財政・地方からみる民主主義	330-343	●	●
	財政民主主義、地方自治の本旨
	・奈良県ため池条例事件（最大判昭和38年6月26日刑集17巻5号521頁）
13	天皇・安全保障・憲法改正	44-70、344-347、362-369	●	●
	日本国憲法下の天皇の地位・権能、9条の解釈、安全保障、国際協力、憲法改正、憲法の変遷
	・砂川事件（最大判昭和34年12月16日刑集13巻13号3225頁）
☆	Achievement Test (2)
	第13回までの範囲についての筆記試験

　以上はあくまで当初の予定であり、授業の展開や履修者からの要望によって、変更することもありうる。
　準拠教材の該当ページは、およその目安である。受講者は、関心や必要に応じて、指定された以外の部分も読み進めてほしい。