2006年度春学期 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科 立法政策論の授業関連情報ウェブページです。
受講者の便宜のため、授業に関するお知らせや使用する教材等を掲載しています。
お知らせ
5月29日の休講分の補講は、7月10日に行います。
レポートの提出方法について
原則として、第13回(7月10日(月))の講義の授業時間中に提出する。ただし、7月24日(月)の9時15分から16時50分までに、事務室窓口でも受け付ける。第13回の講義の際に直接提出した場合であって、その後、それを撤回して24日に改めて提出することもできる(その場合、後から出されたものが前に出されたものに差し替えられたとみなす)。
事務室は、標記日時以外には一切受け付けない(24日よりも前または後に提出することはできない)ので、24日に提出できない場合には、23日までに授業担当者に個別に照会されたい。
講義案内
この講義は、公共政策をめぐる現状の分析から、問題の発見、対策の提示、制度の設計までに至る一連の過程の法学的見地からの検討を通じて、制度デザインの構想力を涵養することを目的とするものである。
法治国家であるわが国の公共政策の多くは、法律ないしその授権に基づいて遂行される。例えば、租税の内容や徴収方法を定めるのは、所得税法などをはじめとする各種租税法である。私たちが学んでいる大学は、学校教育法という法律に基づき設置され、大学設置基準という文部省令を根拠に授業科目への単位数の設定などが行われている。外交・安全保障政策、社会福祉政策、情報通信政策、社会資本整備政策、地球環境政策などについても、たとえそれがいかによい政策であっても、政府は、根拠となる法令がなければ遂行することはできない。したがって、政策の立法化についての研究である立法政策論を学ぶことは、いかなる政策分野を学んでいる学生にとっても、きわめて有益なことである。 これまでの法律学は、実定法を所与のものとしたうえで、その解釈をめぐる議論を行うことが中心であったが、この講義は、法令の制度設計をも射程に入れた先端的な法律学科目である。立法過程論や立法技術論を合わせて受講することにより、立法学の全体像が見えてくるので、この講義を受講しようと考えている学生は、これら2科目の受講も勧めたい。 受講者には、莫大な量の資料を読解して意見をまとめることや、課題を提出したうえで討議に参加すること、授業時間外にも自主的な研究を行いその成果を報告することなどが求められる。したがって、この講義が相当の負担になることを覚悟したうえで、受講を検討されたい。頻繁に遅刻・欠席する学生は、そもそも履修登録をしてはならない。注意事項があるので、履修登録しようと考えている者は、必ず第1回の授業に出席されたい。 |
⇒シラバスは、ここをクリックしてください。
日程
各回の単元/主な内容 | レジュメ | 配布資料 | 参考条文 | ||
1 | 立法政策論を学ぶ意義 | ● | ● | ||
この講義の趣旨及び内容について説明したうえで、政策学と立法政策論、法律学と立法政策論、立法学のなかの立法政策論という3つの観点から、立法政策論の射程を検討する。この講義を履修登録しようと考えている者は、必ず第1回の授業に出席されたい。 | |||||
2 | 立法の現状分析と課題 | ● | ● | ||
憲法を頂点とするわが国の法体系と、法令の形式について説明したうえで、立法の現状を分析し、その課題について議論する。 | |||||
3 | 立法過程論の基礎(1) | ● | ● | ||
法律の制定過程について、各省庁、内閣、国会という3つのステージにおける手続に注目しながら、概説する。特に、内閣提出法律の制定過程を中心に扱う。この時期から、ワーキンググループごとに、具体的な立法政策論についての検討作業に取り組まれたい。 | |||||
4 | 立法過程論の基礎(2) | ● | ● | ||
法律の制定過程について、国会内外のアクターに注目しながら、概説する。特に、議員提出法律の制定過程を中心に扱う。いわゆる議員立法の実態やその特質などについても論じる。 | |||||
5 | 立法過程論の基礎(3) | ● | ● | ||
武力攻撃事態対処法、個人情報保護法制、イラク人道復興・安全確保支援特措法など、いくつかの法律の制定過程を事例として、法律の制定過程を動態的に考察する。 | |||||
6 | わが国の法制度の諸相 | ● | ● | ||
受講者によるワーキンググループが、具体的な政策分野について、立法の現状と課題を概括的に説明する。グループごとに、簡潔なレジュメと参考資料を提出する(発表方法などについては、授業時間中に説明する)。具体的な政策分野としては、例えば、公的年金制度の基本設計、脳死と臓器移植、少年犯罪に対する処遇、環境税制などが挙げられる(もちろん、それ以外にも自由にテーマを挙げてもかまわない)。なお、自分の発表割当ての時間に無断で欠席した場合には、その時点で単位認定の対象から外れるので注意されたい。 | |||||
7 | 憲法適合性と立法事実の吟味 | ● | ● | ||
すべての法律は、憲法に基づき、憲法に適合的に制定される。最高裁判所がこれまでに憲法に違反すると判示した法令や、最高裁判所の憲法判断のあり方などの検討を通じて、法律で定めることのできる事項と定めることのできない事項について議論する。 | |||||
8 | 法的整合性と法的適格性 | ● | ● | ● | |
法律で定めるべき事項と定めるべきでない事項とは何か、道徳を法律で守らせることはできるか、いわゆる基本法は法律であるといえるかなどについて理論的に検討する。 | |||||
9 | 政策的妥当性 | ● | ● | ||
政策の妥当性は、正当性、実効性、効率性、立法目的とその達成手段との間の合理性など、さまざまな観点から評価しうる。具体的な政策をいくつか取り上げ、その妥当性を議論する。 | |||||
10 | さまざまな政策手法 | ● ● (補足) |
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公共政策を具体的に実現するにあたっては、規制的手法や経済的手法など、さまざまな方法が考えられる。どのような場合にどのような政策手法を用いるのが合理的であるかについて議論する。 | |||||
11 | 法制度設計論各論 | ● | ● | ||
受講者によるワーキンググループが、具体的な政策分野について、憲法に適合的で、法的な適格性のある、政策的に妥当な政策提言を行う。グループごとに、簡潔なレジュメと参考資料を提出する(発表方法などについては、授業時間中に説明する)。なお、自分の発表割当ての時間に無断で欠席した場合には、その時点で単位認定の対象から外れるので注意されたい。 | |||||
12 | 立法技術論への導入 | ● | ● | ||
刑法(平成7年)、民事訴訟法(平成8年)及び民法の改正(平成16年)ならびに商法改正の取組みについて説明したうえで、法令の現代語化などについて検討する。 | |||||
13 | 法の概念をめぐる法哲学 | ● | |||
立法政策論の諸問題を概括し、法とは何かをいまいちど、法哲学的な観点からの考察を含めて議論する。授業時間内に、学期末レポートを提出する。 |
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